退職手続きの全体の流れとチェックリスト|返すもの・受け取るもの・役所での切り替え

退職を伝えたあとに残るのは、気持ちの問題ではなく実務です。 やることが多く見えても、整理すると 会社に返すもの・会社から受け取るもの・自分で切り替えるものの3つしかありません。 この3つを取り違えなければ、手続きで詰まることはほとんどなくなります。

この記事では、退職を決めた日から失業給付の申し込みまでを時系列で並べます。 説明の前提は民間企業の雇用契約で、個別の事情に対する法的な判断は当サイトでは行いません。

結論: 退職手続きは3つの箱に分けて考える

  1. 会社に返す — 社員証、PC、制服、鍵、健康保険証などの貸与物
  2. 会社から受け取る — 離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金の番号がわかる書類
  3. 自分で切り替える — 健康保険、年金、そして失業給付の申し込み

「1と2は会社が動かないと終わらない」「3は自分が動かないと始まらない」という違いがあります。 会社側の作業を待つあいだに3の準備を進めておくと、退職後の空白が短くなります。

やることつまずきやすい点
退職を申し出た直後就業規則で申し出の期限を確認し、退職日と最終出社日を仮に決める有給の残日数を数えないまま退職日を決めてしまう
最終出社日まで引き継ぎ資料の作成、私物の持ち帰り、返却物の洗い出しロッカーや共有フォルダなど、当日には取りに戻れない場所を忘れる
最終出社日〜退職日貸与物の返却、受け取る書類の送付先住所を会社へ伝える健康保険証の返却時期を確認していない
退職日の翌日から14日程度健康保険の切り替え、国民年金の届出(該当する場合)任意継続には申出の期限があり、過ぎると選べなくなる
退職後2週間〜1か月前後離職票が届いたらハローワークで求職の申し込み離職票が届かないまま待ち続けてしまう

退職日までにやること

就業規則の確認が最初です。申し出の期限(1か月前など)が定められている場合、 そこから逆算して申し出の日が決まります。

次に有給休暇の残日数を確認します。 残日数が分かってはじめて「最終出社日」と「退職日」を分けて設計できるようになります。 確認方法と、退職日から逆算したスケジュールの立て方は 有給休暇を消化してから辞める進め方にまとめました。 退職日を先に確定させてしまうと、有給が残っていても消化する日数を確保できなくなります。

まだ退職を切り出せていない段階であれば、 辞めたいけど言えないときの整理と、上司への切り出し方の例文を先に読んでください。 この記事は、伝えたあとの実務を扱っています。

会社に返すもの

返却物は会社ごとに異なりますが、共通して挙がるのは次のとおりです。

健康保険証は、扶養に入っている家族の分もまとめて返却します。 返却の時期と方法(手渡しか郵送か)は、最終出社日までに確認しておくと行き違いが起きません。

会社から受け取る書類

こちらは受け取り漏れが後の手続きを止めます。何がいつ届くのかを把握しておいてください。

何に使うか確認しておくこと
離職票(雇用保険被保険者離職票)ハローワークで失業給付を申し込むときに提出する会社がハローワークへ手続きしたあとに交付されるため、退職日当日には受け取れないのが通常
雇用保険被保険者証次の勤務先で雇用保険に加入するときに使う在職中は会社が保管していることが多い
源泉徴収票年内に転職する場合は転職先へ提出し、しない場合は確定申告に使う所得税法第226条第1項により、年の中途で退職した人には退職の日以後1か月以内に交付することとされている
基礎年金番号がわかる書類年金の切り替えや次の勤務先での手続きに使う年金手帳を会社が預かっている場合は返却を受ける
退職証明書国民健康保険の加入手続きなどで退職の事実を示すときに使う労働基準法第22条第1項により、労働者が請求した場合は使用者が遅滞なく交付することとされている

退職証明書は、請求してはじめて交付される書類です。 同項は、使用期間・業務の種類・その事業における地位・賃金・退職の事由について 証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています。 必要になりそうなら、最終出社日までに請求しておくと待ち時間が減ります。

なお、労働基準法第23条第1項は、労働者の退職の場合において権利者の請求があったときは、 使用者は7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定めています。 私物や積立金の返還が滞っているときの根拠になります。

健康保険の切り替え

退職日の翌日から、会社の健康保険は使えなくなります。選択肢は主に3つです。

  1. 任意継続被保険者になる — 退職前の健康保険を個人で継続する方法
  2. 国民健康保険に加入する — 住んでいる市区町村で手続きする方法
  3. 家族の被扶養者になる — 収入などの条件を満たす場合

任意継続には条件と期限があります。 健康保険法第3条第4項は、任意継続被保険者を 「資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であった者のうち、保険者に申し出て継続して被保険者となった者」と定義しています。 そのうえで同法第37条第1項が、この申出は 資格を喪失した日から20日以内にしなければならないと定めています (保険者が正当な理由があると認めるときは、期間経過後の申出を受理できるとする例外があります)。

保険料は在職中と同じ金額とは限らず、どちらが安いかは前年の所得や扶養家族の人数で変わります。 自分の場合の金額は、加入していた健康保険(全国健康保険協会または健康保険組合)と 市区町村の窓口の両方で見積もりを聞いて比べてください。

年金の切り替え

国民年金法第7条第1項は、被保険者を第1号・第2号・第3号に区分しています。 会社員として厚生年金に加入していた人は第2号被保険者にあたり、退職するとこの区分から外れます。 次の勤務先がすぐに決まっていない場合は、第1号被保険者への種別変更が必要になります。

同法第12条第1項は、被保険者は資格の取得・喪失および種別の変更に関する事項を 市町村長に届け出なければならないと定めています。 届出の期限や必要書類、保険料の免除・納付猶予の制度については、 お住まいの市区町村の窓口と日本年金機構の案内で確認してください。

配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先を通じた手続きになります。

失業給付の入口

雇用保険の失業給付(基本手当)は、離職票が届いてから動き出します。 手順は、住所を管轄するハローワークで求職の申し込みをし、離職票を提出するところからです。

受給できるかどうか、いつから支給されるかは、 被保険者であった期間と離職の理由(自己都合か会社都合か)によって扱いが変わります。 金額や日数は個別の賃金額をもとに計算されるため、当サイトでは試算しません。 制度の内容と手続きはハローワークインターネットサービス厚生労働省のページで確認できます。

離職票がなかなか届かない場合は、まず会社の担当部署に交付手続きの状況を確認し、 それでも進まないときはハローワークに相談する流れになります。

退職代行を使う場合も、この手続きは残る

退職代行が担うのは会社への連絡と(種別によっては)会社との調整までで、 返却物の発送、書類の受け取り確認、役所での切り替えは依頼者本人に残ります。 何がどこまで依頼できるのかは運営主体で変わるため、 弁護士・労働組合・民間事業者でできることがどう違うかを整理した記事で確認してください。 申し込み前に確認したい項目は 退職代行のデメリットと業者選びのチェックリストにまとめています。

よくある質問

離職票はいつ届きますか。

会社がハローワークへ手続きをしたあとに交付されるため、退職日当日に受け取れるものではありません。退職後2週間から1か月前後で届くという案内が一般的ですが、会社の手続きの時期によって前後します。届かないまま待ち続けず、まず会社の担当部署に手続きの状況を確認し、それでも進まないときはハローワークに相談してください。

転職先が決まっている場合でも、離職票は必要ですか。

失業給付を申し込まないのであれば、離職票そのものは使いません。ただし、入社日が離れていて空白期間に失業給付を検討する可能性があるなら、受け取っておいたほうが選択肢が残ります。転職先へ提出するのは、雇用保険被保険者証と源泉徴収票が中心です。

源泉徴収票がなかなか届きません。

所得税法第226条第1項は、年の中途で退職した人について、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付することとしています。年末調整や確定申告の時期に間に合わないと手続きが止まるため、届かない場合は会社の給与担当へ交付を依頼してください。それでも交付されないときは、所轄の税務署に相談する方法があります。

健康保険は任意継続と国民健康保険のどちらが得ですか。

一律に決まるものではありません。保険料の計算方法が異なり、前年の所得や扶養している家族の人数で有利不利が入れ替わります。任意継続の申出には資格喪失日から20日以内という期限があるため、迷っている時間が長いと選択肢そのものが消えます。加入していた健康保険と市区町村の両方に金額を確認し、期限内に決めてください。

手続きの途中で会社ともめた場合はどこに相談できますか。

書類が交付されない、金品が返還されないといった状況が続く場合、当サイトでは個別の判断はできません。労働基準監督署の総合労働相談コーナー、弁護士、労働組合といった窓口があります。雇用保険に関することはハローワークが窓口です。

まとめ

この記事で参照した制度

本文中の法令は、デジタル庁が運営するe-Gov法令検索で条文を確認できます (労働基準法第22条・第23条、所得税法第226条、健康保険法第3条・第37条、国民年金法第7条・第12条)。 年金の手続きは日本年金機構、 雇用保険の手続きはハローワークインターネットサービス、 労働条件の相談窓口は厚生労働省のサイトから確認できます。 記載は2026年8月時点の内容です。個別の事情に対する法的な判断は当サイトでは行いません。